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第1部 一章 【財前姉妹】その2 第一話 カオリの誓い

作者: 彼方
last update 最終更新日: 2025-03-12 10:05:11

14.

ここまでのあらすじ

 親の再婚により姉妹になったカオリとマナミは同じ『麻雀』という趣味を持つ仲間だった。二人は面子を探して麻雀部を結成。マナミのクラスメイトの佐藤ユウの家を借りて部活動のようなものが始まった。

【登場人物紹介】

財前香織

ざいぜんかおり

通称カオリ

主人公。

読書家でクールな雰囲気とは裏腹に内面は熱く燃える。

財前真実

ざいぜんまなみ

通称マナミ

主人公の義理の姉。麻雀部部長。

攻撃主体の麻雀をする感覚派。

佐藤優

さとうゆう

通称ユウ

兄の影響で麻雀にハマった。名前の通りのとっても優しい女の子。お兄ちゃんの事が大好き。

竹田杏奈

たけだあんな

通称アン

テーブルゲーム研究部に所属している香織の学校の後輩。ふとした偶然が重なり麻雀をすることになる。

佐藤卓

さとうすぐる

通称スグル

佐藤優の兄。『ひよこ』という場末雀荘のメンバーをしている。人手不足からシフトはいつもランダム。自分の部屋は麻雀部に乗っ取られているがそれ程気にはしていない。

井川美沙都

いがわみさと

通称ミサト

麻雀部いちのスタミナを誇る守備派雀士。

怠けることを嫌い、ストイックに生きる。

その2

第一話 カオリの誓い

 今日は休みなので佐藤家に麻雀部員が昼間から全員集まった。

「今日は私抜きで4人でやっていいよ。私はやりたい事があるから」とカオリが言う。

「やりたい事ってなに?」

「みんなの麻雀を後ろから見てみようと思って」

 カオリは自分が一番未熟だと思っているので勉強がしたいのだ。しかしいつもは人数がギリギリなため自分もプレイヤーになるしかない日が多かったが今日はスグルを数に入れなくても5人いる。この機会に後ろから見て色々吸収しようと考えた。

 じゃあ私の後ろにおいでと全員がカオリを誘う。みんなして見られたい欲求があるとはたいした自信家たちである。そういう点でもカオリとは全然違っていた。

 時間がたっぷりあったのでカオリはその日全員の麻雀を見て回りその日のことを『香織の秘録』に書き残した。

 ××年××月××日

 今日は一日かけて全員の麻雀を研究した。

 我が姉である財前真実は全局参加型のアガリ回数勝負。打点や副露などのこだわりはあまりなく、何とかして美しく整わないものかと探る嗅覚に優れている。守りは薄いが力押しに特化しておりアガリが多いのでそれが結果的に守備にもなっていて結論として強い。

 佐藤優は展開読みの麻雀。どうしたら自分が有利になる展開が訪れるかを考えてリーチやダマや鳴きを仕掛ける。降りつつも1枚だけ押して威嚇をすることでノーテン仲間を増やしたりする。一番頭を使う打ち方。ちょっと真似するのは大変かも。

 竹田杏奈は読みの麻雀。山にあるものを読むだけでなく相手が切るはずな牌に照準を合わせて直撃狙いで狙撃するスナイパー。点差の把握が天才的で微差で捲ることを得意とする。

 井川美沙都は攻めと守りのメリハリが効いている麻雀。メンゼンで大きく仕上げてリードし、そのリードを守り切る守備力もある。手数は多くないが前に出ればほぼ必ずアガリ切るし打点も高い。

────

 ……私は? 私の麻雀ってなんだろ。まだ、なにも定まってない気がする。

 でもいい、それならそれでみんなの良い所だけかき集めて、1番強い女になってやる。 

 そう密かに誓うカオリなのであった。

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